根笹会からのお知らせ同窓会報「根笹」イベントスケジュール同窓会について地区会情報母校情報
トップページ » 同窓会報「根笹」 » 同窓会報「根笹」タイトル由来

同窓会報「根笹」タイトル由来

3期生 下城好一郎

 1990年初め、ひょんな事で同窓会長を引受けた。当時の同窓会の実態は同好会の域を出なかったので、既に6,000名を数えていた卒業者がいる以上、まず公的な団体として名実共に通用するものに脱皮させなければならない。それで「同窓会だより」(当時の会報の誌名)刷新から始めた。読売新聞元政治記者3期の白石清三君を東京から引っ張り出して編集について私の基本的な考え方を伝えた上で一切任せた、と云うよりこれは向こうが本職だ。

 ただ紙面構成には会長として考えがあった。今の内に学園創業の精神・軌跡・遺産を出来る限り残すことである。

  当校の背骨は新島襄先生の精神であることは云うを待たないが、安中の地に発足した最初期、文字通り何もない貧乏学校で誠心誠意我々を教え導いてくれた10名足らずの先生方。そしてその中心であった当時の安中教会牧師、江川栄先生の影響が特に大きかった事に異論あるまい。

  麦とサツマ芋の弁当を持ってヨレヨレシャツに藁草履で通って来る敗戦国の田舎の中学生に、英国紳士の白いハンカチの正式な扱い方を教えることをナンセンスとみるか「ウーン」と唸るか。私としては、今の校風が当時の日本再生の気溢れた圧倒的多数のウーン派により成立したこと、これを是非伝承したい。
先生にその象徴=牧者の席に坐って頂きたい。そこで先生の字が上手下手を超越した雄渾なものだった事とも合せ、新聞名を「根笹」と決め、先生に揮毫のお願いに参上した。

  先生は当時96歳、清貧の身を夫人とお2人で信者の好意による古びた10畳程の木造1DKにお住まいだった。長押にケンブリッジ大学(ウエストミンスターカレッジ)修了証と英文の聖書の一節が美術品に仕立てられたリトグラフが掛けられていた。

  お願いして約1ヶ月、「この中から選べ」と送られて来た大封筒を開けて驚いた。古い大封筒を裂いた裏紙を始め、使用済の大小の古紙の裏に書かれた墨痕鮮やかな「根笹」が大量に出て来たのである。

  私はこの「根笹」の山を前にして暫し黙坐していた。先生に最後のレクチャーを受けた様な心境であった。

  この大量の「根笹」の中より一枚を記念に表具し、礼拝堂一階の同窓会室に掛け、先生の無言の講義のテキストの山を全部同窓会に残して来たが、今どうなったであろうか。

 


新島同窓会報「根笹」

新島学園中学校・高等学校 新島学園短期大学