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理事長近影  

新島襄の志を継ぐ
「今、新島学園は、
新島学園になっていますか!」

新島学園中学校・高等学校 校長
岩間秀彬

 新島学園同窓会(根笹会)の皆様、日頃の温かいご支援とご指導を心から感謝し、御礼申し上げます。小生のような、教育界に経験のない者が、この2年半程の間、校長として勤めてこられましたことは、教職員の皆さんの良き理解と協力によるものであり、また、保護者の方々の御理解とご協力によるものであります。

 新島学園を取り巻く環境は、少子高齢化の中で、群馬県下の中学入学者数が、今後10年で、15~6%減少することが予測される厳しい状況にあります。

 一方、日本全体もグローバル化の中で、人口減少、地方の過疎化、経済成長の急速な鈍化と、問題は山積していますが、政財界そして教育界は、これらの問題を打開する方向として、中長期な展望から、グローバル人材の育成に活路の一端を見いだそうとし始めました。

 具体的には、グローバル化の中で、中学・高校では、基礎知識を身に着けたら、受験難問を解く力の教育ではなく、基礎知識を基に問題解決型の思考を養い、世界に出て行っても臆することなく生きていける人間力の育成に視点を置いた教育へと、舵切をすることです。その方向に向けた大学入試改革も発表されました。それは、今年の中学1年生が大学入試を受ける時(6年後)から施行されます。

 中学・高校の中等教育において、自分で考え、自ら行動し、内向き思考を外向き思考に、ネガティブ思考をポジティブ思考に、自己否定の傾向を自己肯定の意識改革へ、大きく変えることの重要性を強く意識した教育が、今まで以上に重要な時代になってきたと認識しています。
この様な環境認識のもとに、新島学園は「すべては生徒の成長のために」を合言葉に、昨年4月から様々な新しいプログラムを導入いたしました。

 一つは、「e-learningすらら」です。フィリアホール3階に220台以上のパソコンを装備して、昨年4月から開始しました。北関東では、初の試みです。また、全学年全生徒対象に導入したのは、全国でもまれな試みでした。

 自学自習システムとして、全体の基礎学力の底上げという目的に向かって、確実に進捗が見られております。

 二つ目は、グローバル化に対応する試みとして、希望者対象でしたが、いくつかの新しいプログラムを導入したことです。

 課外活動としての英語で英語を教える「国際教室」の開設、アジア太平洋大学での研修、夏休みを利用した「エンパワメント・プログラム」等があります。

 「国際教室」では、参加した生徒達は、英語を使うことの楽しさを知ったと思います。その成果として、学年末の英語での発表会「final Presentation」において、英語でのスピーチを初め、寸劇や、歌等の創造的なパフォーマンス発表で、英語をあまり意識することなく、非常に楽しんで使っている姿を見ることが出来ました。

 「アジア太平洋大学の研修」では、アジアからの留学生のハングリー精神と国を代表して日本に勉強に来ていると言う学生の姿勢に、新島からの参加生徒が感動していました。そして、自分も、ただ勉強するのではなく、何か社会のために役に立つような高い目標を掲げて勉強する意義を持ちたいと言っておりました。

 エンパワメント・プログラムでは、世界大学ランキングTOP10に入るカリフォルニア大学バークレー校やL.A.校の学生さん達と1週間英語漬けの日々を過ごす間に、彼らのポジティブな考え方に強く感化されて、英語の活用力向上と共に日本人特有のネガティブ思考、から、非常にポジティブな、前向き思考へと考え方を変えた生徒が沢山出てきたことは特筆すべきことでした。

 昨年7月に、エンパワメント・プログラムに参加した生徒の感想の言葉の一部を紹介します。

*Positive Thinkingが大切!自分を見直すきっかけになった。
*価値観が変わった。将来への目標がはっきりした。
*わずか1週間の刺激を受けて、自分がこんなに変わるとは思わなかった。
*自分に自信が持てた。

 また、中学では、ここ数年、「Joe プログラム」というキャリア教育を進めて来ています。

 「Joe プログラム」とは、新島襄と自分の生き方を重ねて将来を展望し、中学のうちに力をつけておくべき目標を定めて取り組むプログラムです。

 キャリア教育(OB講座等)や多読・英検・漢検に積極的に取り組む新島チャレンジ、そして夢作文や新島襄についての小論文作成等々、人間基礎力をつけるための様々な取り組みが「Joeプログラム」の一環として行われています。そしてその成果が着実に見られてきています。

 一方で、このようなときこそ、新島学園としては、もう一度教育の原点であるキリスト教精神に基づく人格形成について、見直すことの大切さを感じました。ここで、新島学園の基本に戻って、表題の「今、新島学園は、新島学園になっていますか!」という質問に、正面から取り組みたいと思います。

 新島学園は、グローバル化と言う言葉に振り回されて、浮足立って何かをしている学校にならないように、新島襄という日本のグローバル人間第一号の輝かしい足跡をたどりながら、新島襄の精神と行動に裏打ちされたグローバル人材の育成に乗り出していることを再確認したいとの思いから、昨年と今年の二度にわたり、同志社大学元神学部教授の本井康博先生をお招きして、教師研修会を持ちました。 

 本井先生は、昨年は「新島学園の教育のこころ~新島襄の志に学ぶ」と題し、今年は、「新島学園を、新島学園にするために~新島襄の志を継ぐ」と題して、教職員対象に講話をしてくださいました。

 この研修の感想文を教員の方々が書いてくれましたが、その中から、新島学園の教育の基本を表す言葉を拾って紹介いたします。

  1. 「大魚も小魚も自由に泳げる学園」「破れ太鼓の様な子でも見捨てない学園」、力は一切なしの人間作りの教育、私はこの学園の教師であることに感謝している。
  2. 私は普段、忙しさを口実に、新島襄の説いた精神を忘れている。「新島襄だったらどうするか」と自問自答する時間を持ちたい。
  3. ルールに則って、平等の名のもとに、十把一絡げに生徒に適用するのは楽かもしれない。しかし、新島襄の目指す教育はさらにその一歩先を行く。私は、生徒一人一人と根気強く向き合わねばならない。
  4. 「友はわが師、師はわが友。」、生徒から学ぶ姿勢を忘れず、「下に昇っていく」気持ちで生徒に接し、「すべては生徒の成長のために」という姿勢を忘れない教員を目指したい。
  5. 自由こそ学園の生命線。この時代、自由の本質を我々が学び、自由を育むことが大事であると痛感する。
  6. 「小さなおもちゃ工場にならないでください」と言った新島襄。個性をもって本当に社会で必要とされる人間を育てるため、私達は生徒に何ができるか。
  7. 「志」には、「未来」が横溢し、ビジョンが躍動している。「志の教育」の前提は、人間への信頼だろう。生徒一人一人への信頼だ。
  8. 成績という非常に小さな物差しで生徒を測っていないかと心配になる。個々が互いの存在を認めつつ、そのままの存在を受け入れることの大切さを知る。

 新島学園の教職員の方々は、新島襄の教育の心に真摯に向き合い、自己を振り返りながら、生徒一人一人に出来る限りの愛情を注ぎ、自治自立の精神、世界を友とし、自己肯定感を持った人間の育成に努め、生徒を他人の立場にたって考え行動することが出来る真の思いやりを持つ人物に育てることを目指して、日々取り組んでおります。私は、「今、新島学園は、新島学園になっていますか!」の問いに対して、「今、新島学園は、新島襄の志をそれぞれの心に抱きながら歩んでいる」と、力まずに言える空気を感じております。

 


新島同窓会報「根笹」

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