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喫緊の課題(生徒募集)に競い勝ち、将来の課題(人工知能の世界)にも生き残れる生徒の育成を目指して!

新島学園中学校・高等学校 校長
岩間秀彬


 今、日本全体が、グローバル化の波に翻弄されながら対応を迫られている中で、新島学園も、教育の分野でグローバル化に対応した、新しい、ユニークなプログラムをいろいろ導入して来ました。その活動については、昨年のこの会報「根笹」で、「新島襄の志を継ぐ『今、新島学園は、新島学園になっていますか!』」と言う表題で、報告させていただきました。

 今年は、これらのプログラムの幾つかが、開花し、結実し始めていることを報告できますことは、教職員はもとより、保護者、並びに同窓会の皆様のご理解と御支援によるものと、心から感謝しております。

 例えば、中学生を中心とする「Joeプログラム」の一つである「新島チャレンジ」は、英検、漢検、多読について、中学生全員が、自分の目指す目標を教室に張り出して、互いに励まし、競争するものですが、英検挑戦の結果、2016年4月の時点で、準1級(英語の教師に要求される資格の一つ)が2名出たこと、この2~3年で、中学3年までに3級以上を取得する生徒数が50%を越えたことです。

 また、「エンパワメントプログラム」は、北関東では初めて、新島学園が導入した英語でのアクティブラーニングプログラムです。今年3年目を迎え、今まで最多の75名の生徒が参加し、世界ランキングトップ10に入るカルフォルニア大学バークレー校の学生や東大大学院留学生数名等、計14名の世界トップクラスの学生に指導を受けて、7月中旬に、学園内で、生徒達は1週間英語漬けの毎日を送りました。生徒達は、色々なテーマについて、討論やプレゼンテーションで鍛えられ、見事にやり遂げて、「自分に自信を持ち、ポジティブ思考を身につけ、大きく変わった自分を見出した」と誇らしげに語っていました。また、その姿を見て、「本当に参加させて良かった」と保護者も、喜んでくださいました。

 一方、私学を取り巻く、生徒募集の環境は、年々厳しさを増して来ています。

 今年は、6月から始まった地区別学校説明会は、昨年比2割減の参加数で、危機感を感じる中、7月のオープンスクール開催に向けて、広報部の先生、教頭、他教員と手分けして、私も、緊急に60校ほど小学校訪問をし、学園のポスターや学校案内、募集用資料を配って歩きました。訪問先の校長室に通されて、校長先生から色々な情報を聞く中で、「最近は、公立の中学からも、公立中学の定員充足を促す訪問がある」と、生徒募集の厳しさを知らされました。また、近隣の小学校では、「今年卒業する6年生は110名で、入学した1年生は80人であった」と、この数年の入学生数の急減を告げられ、危機感をさらに募らされる日々です。

 生徒募集は、新島学園が保護者や同窓生のご協力も得ながら、ファミリーとして取り組んでいる喫緊の課題です。実際、安中地区を筆頭に、各地区の保護者が、学校説明会を応援して、受付役や、保護者から見た新島学園のアピール等に参加してくださっています。近隣の競合校の農大二高が、2017年度高校入学定員数を、560名から40名減の定員下方変更を打ち出しましたが、我々は、現定員200名を堅持することに変わりはありません。

 この様な喫緊の課題と共に、もっと将来の社会の変化に対する教育内容の対応も重要な時代に直面していると思います。その筆頭が、人工知能の50年ぶりのブレイクスルーと言われる飛躍的な進歩と、それに伴う第4次産業革命の始まり、今後10年の急激な社会変化と、その変化にも生き残れる人間の教育です。

 人工知能(AI)は、今や、将棋や囲碁のプロ棋士を打ち破り、金融市場では、フィンテック(IT技術を駆使した新たな金融サービス)よる取引が人を越え、長崎のテーマパークでは、チェックイン業務を全部ロボットが行うホテルが登場しており、また、将来は人工知能による完全自動運転により、無人タクシーの出現が予想される中、「人工知能は人間を超えるか」とのテーマを少し敷衍しながら、学園の教育の方向を考えてみたいと思います。

 人工知能(AI)は「思いつき」や「閃き」がありません。判断基準となるのは「事実」だけです。AIにできるもう一つのことが、「機械学習」というものですが、例えば、コンビニのレジに搭載されているAIは、アンパンを買う客は牛乳も一緒に買うことが多い。おにぎりを買った客のうち70%はお茶も一緒に買っていく…のように、今まで入力された客の情報から、法則やルールをあぶりだし、分析するのが得意です。

 人間がAIに負けないために、脳みそにあってマイクロチップにないものとは、人間は「事実以外のことも見る」ことができるという点です。人間は「個別性を認識」できます。仕事を繰り返す中で身につく勘だったり、その人やその場所に応じた対応だったり、人間にしかできないこともあるのです。つまり、AIと人間はお互いにできること、できないことがある、ということになります。

 「ロボットは東大に入れるか」というプロジェクトで、「東ロボくん」はすでに、センター試験で私立大学の8割には、合格するレベルに来ています。2020年の大学入試改革では、センター試験にとって代わる、基礎力と同時に人間力も見る試験の導入が検討されています。これからの教育の方向は、この様な観点も考慮する必要があります。

 国内で働く人の約半数が就く仕事が、10〜20年後に人工知能(AI)やロボットに置き換えられるとの推計を、野村総合研究所と英国の研究者がまとめた報告があります。人口減少による労働力不足を補うことが期待される半面、過度に代替が進めば職業の選択肢が大きく損なわれる可能性がありそうです。

 置き換えられる可能性が高いとの結果が出た職業は、一般事務員やタクシー運転手、レジ係や警備員、ビル清掃員やホテルの客室係など。研究では「特別な知識や技能が求められない職業」等が確認されました。

 一方で、代替可能性が低い職業は、外科医や内科医といった医師のほか、小学校や大学などの教員等です。観光バスガイドや美容師といった、人との意思疎通が必要な職業も置き換え困難とされました。人間の仕事が無くなるというよりは、人間の仕事の質が変わっていきます。例えば、「学校の先生」の役割は、これまではコンテンツを教えることが主でした。しかしこれからは、「あなたの夢はなにか」「それを実現するためにどのような努力をするべきか」など、生徒に語りかけることの比重が大きくなっていくと思います。こうしたことが、段階的にさまざまな業界で起こっていくと言うのです。

 5年以内の短期的では、各分野、特に法律や医療、会計、税務等のデータに基づく、かつ現在多くのコストが支払われている分野でビッグデータ化、人工知能化が進み、一部の作業が自動化されていくようです。

 5〜15年の中期的では、いまは監視員や警備員などが担っている監視系業務、商品の数を数え店の売り上げをエクセルにまとめるなどのルーティーンワークがコンピュータによって置き換えられ、人はよりクリエイティブな仕事に専念できるようになります。

 15年以上先に起こるのは、人が担う仕事が2極化していくということです。データに基づく試行錯誤が難しい状況下での(1)「大局的な判断」が求められる仕事か、営業、星付きレストランの店員など(2)「対人間の高級なインターフェース」が求められる仕事か、だと考えられています。
これからは、人工知能時代に求められる3つのスキルを身につける事が必要だと言われています。

1.クリエイティブスキル…0から1を作り出すスキル。これは機械には出来ないことです。

2.起業的スキルとリーダーシップスキル…機械は基本的には起業しないものです。交渉力、ビジネスセンス、問題解決能力が求められるのが起業的スキルです。優れたビジョンを掲げ、卓越したコミュニケーション能力で人々を導いて行くスキルです。

3.人間性を磨くこと…教育面で最も大切なことですが、社会的存在である人間としての「人間性」を磨くと言うことです。私たちが磨くべきは、人に共感したり、人とコミュニケーションをしたり、文化や芸術を理解するような、人工知能にはどうしても再現の難しい「人間らしさ」です。それが、人間がより人間らしい生活を送ることを可能にする最も大切なことでしょう。テクノロジーが発達した今の時代だからこそ、「人間らしさを」益々大切にしようということになります。

 この50年の間に、単純作業は機械やコンピュータがこなすようになり、人間は機械のできない「人間的な仕事」を担当するようになってきました。しかし、日本の教育システムは50年前とほぼ代わらないといっても良く、日本の学校で教えているのは、暗記、計算、正確な綴りなど、機械が最も得意とする事柄ばかりで、頑張って高得点を稼ぐ優等生は、暗記、計算、単純作業などの“機械っぽい”スキルが身に付いている生徒です。

 現在の日本の教育システムでは、優秀とされている生徒や高学歴の学生が身につけている能力は、残念ながらこれからAIやロボットに取って代わられる可能性が非常に高いものと考えられます。現在の実社会では答えが無い事の方が多く、むしろ、ほとんどの場合、答えは自分で作り出さなければなりません。答えのない問題に取り組む姿勢、正解のない問題を考える教育が、これから益々大切になるでしょう。

 人工知能が人間を超えようとすればするほど、新島学園は、新たにユニークなプログラムを次々と導入して、クリエイティブスキルやリーダーシップスキル等を育てることが大切になります。さらに、新島学園の建学の精神であるキリスト教精神に基づく、新島襄の教育の心、「他を思いやる心」を持った生徒を、「世の塩、世の光」として、社会に送り出して行くことの大切さを確信して筆を置きます。

 


新島同窓会報「根笹」

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