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苦難は忍耐を、忍耐は練達を、
練達は希望を生む

学校法人新島学園 理事長 湯浅康毅


 2019年度新島学園中学校・高等学校同窓会根笹会会報紙『根笹』発刊誠におめでとうございます。

 立見会長様はじめ根笹会本部及び各支部の皆様には日頃新島学園へのご協力を賜り、また創立70周年記念事業から生まれた10年ビジョン「NIIJIMAGAKUEN GRAND DESIGN 2027:木を育てる。」に関する事業に対しても引き続きのご理解とご支援を賜り厚くお礼を申し上げます。


 これまで6年間にわたって新島学園の新しい学びの在り方を実践された岩間秀彬先生が昨年度末をもって退任され、本年度はこれまでの本学歴史の中で初となる国際基督教大学高等学校より古畑晶先生をお迎えし、新島学園の新たな伝統と革新のためにご尽力いただくことになりました。

 国際基督教大学(ICU)は戦後まもなく日本と北米のキリスト者たちの願いと祈りによって1949年に創設が決定され、人類平和のために貢献する人物を育成するというミッションの元、国内におけるリベラルアーツカレッジとしての伝統と革新を重ねる私学の雄として広く知られております。

 国際基督教大学高等学校はICU創立、29年後に同じ理念を継承し、主に帰国子女を受け入れるキリスト教主義の私立高等学校として生まれました。古畑先生はほぼ創設時から関わり、現在文部科学省が指定を進めているスーパーグローバルハイスクールの制度が始まる2014年の遥か前にその先駆けとなるモデルケース作りに関わられた中心人物のお一人であります。

 また新島学園と国際基督教大学とは、本学初代理事長・校長であり、ICU初代学長であった湯浅八郎氏によりお互いの原点が繋がっていることも忘れてはならない点です。「Not another school, but only this school」という創設時に送ったメッセージは両校で共有している今も生きている言葉であります。

 是非このことを憶え新たな体制で臨む新島学園を皆さんで応援いただきますようお願い申し上げます。


 さて、本年度第1回評議員会冒頭の挨拶で、「後々振り返った時に“この一年”を乗り越えたことで今の新島学園がある、という年にしたい」とお伝えしました。

 この発言の背景には、3か年に亘って活動をしてきた創立70周年記念事業の終焉と、それにとって代わる新たな歩みである10年ビジョン「NIIJIMAGAKUEN GRAND DESIGN 2027:木を育てる。」を機に、新島学園のソフト面・ハード面の再整備を目標に大きく動き始めたタイミングであり、とても大切な一年であると捉え、今後自ら積極的にこの流れを推進していくために改めて申し上げた次第です。

 また今年は、これまで学園の伝統を築いてきた功労者である第三代理事長が、国内の宣教師として新島学園を含め上州安中を中心に大きな働きをされたハーバート・J・ ベーケン先生が続けて永眠され、その多大なる功績をそれぞれ憶えつつも新島学園にとってこれほど深い悲しみを共にする節目の年は無いのではないかと思っております。

 このような中にあって、6月末に本学元教員による刑事事件が発生してしまいました。このことに関しまして、日頃母校・新島学園の歩みを支えて下さる根笹会の皆さんに多大なるご迷惑とご心配をお掛けしてしまいまして、学園を代表致しまして心からお詫び申し上げます。

 大切なお子様をお預かりし、最優先に守らなければいけないはずの立場にある者が犯した罪により、被害に遭われた方とご関係の皆様を傷付け、在校生や保護者の皆様、日頃応援いただく根笹会の皆様、常に祈りをささげて下さる教会関係者を含む多くの皆様の心にも大きな傷を刻み込んでしまいました。

 このことは元教員自体の罪ではありますが、私としては今回の事件は新島学園から生まれてしまった罪としてしっかり関係者が心に刻み付け、「学園創立以来の危機」として受け止める必要があると認識しております。

 「学園創立以来の危機」と申しましたのは、今回の事件のインパクトが新島学園だけに限らず日本の私立学校にとって、そしてキリスト教学校の歴史の中でも大変大きな影響があると共に、万一この事件が生まれてしまった背景に現在の「学園の風土」に何かしらの要因があるとするならば大変大きな問題であり、このことこそが「学園創立以来の危機」以上に「学園存続の危機」であると言えます。

 この危機意識を関係者一人ひとりがしっかりと心に刻み付け、受け止め、決して逃げることなく真正面から向き合い、誠心誠意祈りを重ね尽くし続け、そして改めて気を引き締めて学園の真の再生に向けて一丸となって奔走すべき時であると考えます。

 今後の対応につきましては、まずは前述のことを踏まえつつ、現在一番傷つかれている方々のお気持ちを最大限憂慮し、寄り添わせていただくことに力を注がせていただいております。

 学園として初めてステークホルダー以外のメンバー(弁護士、キリスト教学校教員、新島襄理解者、臨床心理士、公立学校管理職経験者、補助員数名)で構成する第三者委員会を設置し、今回の事件が何故学園から生まれてしまったのか直接的・間接的原因究明と再発防止策等の提言含む報告に向けて現在調査活動を進めております。

 また学内においても検討委員会を組織し、第三者委員会の最終報告をもって速やかに実働できるよう体制づくりも同時に進めて参ります。

 期せずして、今後の10年ビジョンの中で新島学園の再整備を行うとお約束し、新たな歩みを始めている中にあって、今回の大きな変動が起こったことで再整備という言葉が大変大きな意味を持つようになっております。

 この中で今後は特に関係者の中で普段語り合うことが少なくなっております「建学の精神」と「教育の五原則」を通して実現する「良心教育」について真の理解が求められてきます。

 70周年記念事業の中で語り、理解を求めてきた新島学園の歴史・文化・時間軸についても更に理解を深めていく必要があります。

 5年前に第5代理事長として就任させていただきました時に掲げた基本方針の意味も再度確認していかなければなりません。

第5代理事長 基本方針
「No Place like Niijima」
◆概念
 人生の根底に触れる学び舎(作り)
◆構想
 本物の新島学園づくり
◆使命
 伝統を守る(原点の確認)
 伝統を活かす(新しい価値の創造)
◆心構え
 本物・本質


 明治15年7月15日に原市にて新島襄が送った大切なメッセージ「地方教育論」では、教育の東京一極集中体制を批判し、地方でこそ有志が学び舎を起こし、その地を担う人物を養成すべきである。その後学びを終えた者はどんな立場であろうと平時はその任を全うし後人の手本となるべきだが、万一何か事が起きた時には立場や身分を超えて自ら率先して事に当たるべき、とあります。

 現在新島学園は困難の時を与えられていますが、このような時にこそ様々な立場の方がそれぞれの立場を超えて率先して母校を支えるべく行動に移して下さっております。まさに新島襄の「地方教育論」の中で求める人物の行動であると誇りに思います。それぞれのお気持ちによって支えられていることに対して改めて深く感謝を申し上げます。

 根笹会の皆さんには是非今後も母校・新島学園と共に歩んでいただけたら幸甚に存じます。どうぞ引き続きよろしくお願い申し上げます。


 最後に、この1月に永眠した第三代理事長であり、父であった湯浅太郎の信仰に纏わる話に触れて締めたいと思います。

 父が亡くなった後に悲しむ暇もなく慌ただしく家族葬の準備をしている中で、司式を依頼した安中教会の江守牧師と打ち合わせをしている際に、「太郎さんは康毅さんにとってどんな人でしたか?」と訊ねられました。無口な人でしたので暫くの間、考えているとふと「忍耐の人であった」と自然と言葉が出てきました。すかさず江守先生が「それはローマの使徒への手紙第5章の一説のようだね。」と返されました。

 その後葬儀の次第制作に必要な本人の教会員原簿内の愛唱聖句を確認してみるとまさに「ローマの使徒への手紙第5章3-4節」の箇所である「苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生む」という聖句を生前自ら選んでいたことがわかりました。

 これまで信者としての父の姿はあまり思い浮かばなかったのですが、息子から見た父の生き方が自身の愛称聖句の如く、苦しくとも忍耐を伴うことがあっても神に祝福された生き方であったと父亡き後に知ることが出来、改めてこの導きと恵みに感謝した次第です。


2019年度総会より


新島同窓会報「根笹」

新島学園中学校・高等学校 新島学園短期大学