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新型コロナウイルス感染以後の
本校におけるICT環境の変化

新島学園中学校・高等学校 教頭 小栗仁志


 昨年度猛威をふるい、学校を臨時休校に追い込んだ新型コロナウイルスですが、新しい年度の2021年度に入っても決してその勢いは衰えることなく、この原稿を書いている8月末の時点においては群馬県に緊急事態宣言が発出され、2学期を分散登校で始める事態になっております。

 新しく日本に入ってきて急速に広がっている「デルタ株」と呼ばれる変異種のせいでしょうか、ここしばらく生徒の年齢である10代の感染が広がり、学校での感染対策も今まで以上に力を入れなくてはならない状況です。

 昨年度の「根笹」にも書かせていただきましたが、昨年の臨時休校期間中、本校は生徒の学びを止めないためにICTを用いて生徒の学習を支援しました。具体的には臨時休校以前から使用していたWeb教育サービスであるスタディサプリ、クラッシーを使っての課題の配信、回収、講義の動画閲覧などを行い、また、教員がそれぞれ教室で授業動画を撮影し、それを動画共有サービスであるYouTubeにアップロードして生徒が授業を見ることができるようにしました。臨時休校中に行った調査の結果、長時間動画を見る環境が自宅に整っていない生徒のご家庭があることがわかりましたので、環境整備をお願いすると同時に、ノートPCの貸与なども実施しました。またご家庭のICT環境整備のため、生徒一人あたり、PTAの皆様から3万円、同窓会の皆様から2千円の支援金をいただきました。予想外の負担を各ご家庭にお願いすることになったタイミングでご支援をいただきましたこと、同窓会の皆様に改めまして心より御礼申し上げます。

 こうしてICT環境を整えつつ、昨年6月1日から分散登校となり、同月15日からは通常登校が再開されました。それ以後は、皆様の感染対策へのご協力もあり、原稿を書いている2021年8月末現在まで、全国的な新型コロナウイルスの流行の波がありつつも、学園内で集団感染を起こすことなく、通常登校を継続することが許されました。そのため、授業動画を配信し自宅で見る必要はしばらくなくなりました。

 しかし、臨時休校中大活躍したWeb教育サービスのうち、スタディサプリはその後も全学年に導入し、生徒への連絡、課題の配信、講義動画の閲覧など学習に活用し続けています。特に1コマ約15分の手頃な長さの講義動画はコンパクトで内容もわかりやすいと評判です。スタディサプリと連動した学習評価テストである「到達度テスト」を高校では年に2回実施し、理解不足の項目を発見し、その項目を重点的に課題配信するなど、より個人の状況に応じた学習環境を整えることが出来ています。

 また、Webで学習しているのは生徒だけではありません。本校は昨年よりオンライン教員研修サービスである「Find! アクティブラーナー」を導入し、Webで動画を視聴しながら教員も随時研修に励んでいます。私たちが直面する緊急の課題でもある教員の資質向上のために、このような形でも努力をしております。

 昨年度の新型コロナウイルスの感染拡大とそれに伴う臨時休校を契機に、公立ではGIGAスクール構想が一気に進み、具体的には生徒の一人一台端末使用が実現しています。残念ながら本校では、一人一台端末の使用については公立よりも一歩遅れている状況です。ただ、臨時休校、分散登校中に改めて痛感させられたのは対面による授業の大切さです。人が顔と顔を合わせてコミュニケーションを取り、そのことで伝わることの大きさを再確認しました。新島襄の精神である「キリスト教主義教育」、その中でも特に大切な「良心を手腕に運用する」人物を育てる教育の実現のために、手渡し、手作りの教育環境を本校は他校よりも一層大切にしなければなりません。

 しかし、一方で世界は、産業化社会(Society3.0)、情報化社会(Society4.0)に続く、高度なICT技術を基盤に、ネット上のサイバー(仮想)空間と現実空間が強く結びつくSociety5.0へ急速に移行しつつあります。そうした時代を生き抜く生徒たちのために、ICT技術を積極的に日頃の教育活動に取り入れるべく、新島学園ならではのGIGAスクール構想を展開する予定です。

 本校では一人一台端末の所持・使用よりも、対面授業をベースにした教室のICT環境構築を先行させることとしました。具体的には、電子黒板機能を搭載したエルモ社製の65インチ液晶ディスプレイを今年の10月に各教室に設置します。教員が持っているパソコン、タブレットと接続し、教員が前もってパワーポイントなどのアプリケーションソフトで作成した授業データを投影して授業ができるようにします。今までの黒板中心の授業と異なり、画像、動画、音声、また、生徒の回答などを表示、視聴することができるようになります。教員があらかじめ作成したデータを活用し板書の時間を減らすことで、生徒がお互いに対話的に学ぶ時間を確保し、授業のスタイルを「アクティブラーニング型授業」に変更していきます。

 アクティブラーニングは従来の座学中心の一斉授業ではなく、生徒の主体的、対話的学びを重視した活動的な授業形態です。学習指導要領で謳われ、大学や社会が近年重視している「主体性」「多様性」「協働性」を養うと共に、キリスト教主義に基づく「生徒たちが学びを共に支え合う」「隣人愛の実践」活動を取り入れることで、より建学の精神にも則った授業展開ができるようになります。

 先ほど書きました「Find! アクティブラーナー」の提供者である株式会社FCEエデュケーションの協力のもと、今年度は「授業改善プロジェクト」を立ち上げ、全校あげてのアクティブラーニング型授業の導入を目指しています。その流れにしっかり呼応する形でGIGAスクール構想を進めて行きます。教室でのICT環境が整った後に、来年度より中学1年生、高校1年生を対象に、タブレット端末を配布(有償での貸与を予定)し、それを授業や毎日の学習、学級運営などに活用していく予定です。現在、その実現に向けて情報部を中心に急ピッチで準備を進めております。


 冒頭に述べましたように、8月20日から群馬県に緊急事態宣言が発出されました。山本一太群馬県知事より県立学校に対して新学期開始から9月12日の宣言終了(予定)まで「分散登校」の指示が出されました。私学である新島学園は指示に直接服する義務はありませんが、最近の感染拡大状況、特に若年層に感染が拡大している状況を考慮し、県立学校と足並みをそろえ分散登校を実施することとしました。

 各クラスを名簿の前半と後半の2つのグループに分け、交互に登校をします。各クラスで授業を行う際にZOOMのアプリケーションを使用して授業を同時配信する予定です。登校していない残りの半分の生徒は自宅で、スマホ、タブレット、PCなどで授業に参加することになります。本校ではまだ同時配信による授業展開は未経験なので、その実現に向けて現在、急ピッチで準備を進めています。何分、初めての試みなので開始当初は混乱も多く、生徒・保護者の皆様にはご迷惑をおかけすることもあるかと思いますが、ご理解、ご協力の程、よろしくお願い申し上げます。

 今後、感染状況がより悪化した場合、分散登校が長引いたり、臨時休校になったりする可能性も否定できません。そうした場合、Webを使っての授業の同時配信は必要不可欠な取り組みです。新型コロナウイルスの感染から生徒を守りながらも、学びを止めずに継続していくために、ICT環境の充実に懸命に取り組んで行く所存です。  同窓会の皆様におかれましては、常日頃より学園のことをお覚えいただき、陰に日向にご協力を賜り、心より感謝申し上げます。皆様のご健康が、この状況下でも守られますように心よりお祈り致します。

 


新島同窓会報「根笹」

新島学園中学校・高等学校 新島学園短期大学