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恩師探訪 里見義康 先生

在職期間 1958年4月~2001年3月 



 安中市内にお住まいの里見義康先生をお訪ねしました。当日は、奥様と娘さん(中・高38期生)、お孫さん(高校3年在学中)とご一緒させていただく機会を得ました。

 話をうかがう私は、学園中高で同僚として働かせていただいた期間が10年以上あります。しかし、高校2年の学級担任でもあり、英語の授業も持っていただいた恩師です。先生の笑顔と「久しぶりだねえ」の声に、心はすっかり生徒の頃に戻ってしまいました。

 里見先生は、新島学園創立11年目となる1958年に学園に奉職されました。先生は東京都の御出身で、群馬県には縁者はいません。国際基督教大学の第2期生として学んでいた先生は、当時ICUの学長である湯浅八郎先生が理事長を務めていた群馬県の新島学園に興味はあったそうです。群馬県出身の友人に誘われ、一緒に教員採用試験を受けたところ先生の方が合格してしまいました。しかし、縁もゆかりもない群馬県の安中で就職することをためらっていました。そんな時に、山崎金治郎先生がわざわざ東京まで出向いて熱心に誘ってくださり、群馬に来ることを決心したのだそうです。

『当時の新島学園は男子校で、非常にバンカラでねえ、そうした中でも先生方が生徒を呼ぶ時には、必ず「○○君」と敬称をつける紳士的な校風が気に入ってねえ』、と昔を懐かしむように語ってくださいました。新島学園中高では、当時からアメリカ人教師による英会話の授業と習熟度別クラスでの授業を実施するなど、県内でも英語学習で先進的な取り組みをしていました。里見先生はたいてい当時のAクラス(最上位クラス)を担当しており、『英語の里見クラス』は学園生にとってはブランド的価値をもっていたと語る卒業生もいます。いつも笑顔で、決して大声を出したり、叱ったりすることはないのですが、授業は常に緊張感たっぷりでした。これには当時のバンカラ学生も貫禄負けだったと思います。

 私は今回の訪問に際して、先生のHRやクラス礼拝などを思い出し、質問を用意しました。クラス礼拝では、讃美歌『春のあした、夏の真昼、秋の夕べ、冬の夜も…』(旧讃美歌503番)をよく歌っていました。我々が『刈り入るる~…』の『るる~』の巻き舌発音を真似ていた事。大学時代の山岳部でのいろいろな体験談。ICUの授業の話で、キング牧師の演説『「I Have a Dream」の暗唱をする話などです。これらは私の曖昧な記憶ですが当時から印象に残っていたものでした。先生は、少し照れくさそうな表情をうかべながらも、一つ一つにうなずきながら『よく覚えていたねえ、懐かしいよ』と答えてくださいました。

 実は、今回一番聞きたかったことは、先生のニックネームの【ロクさん】についてでした。生徒にとって、先生方のニックネームは興味がありますが、アンタッチャブルです。切り出すタイミングを図っていると、有り難いことに奥様が話題にしてくださいました。本来は、俳優の【小坂一也】さんに似ていることからついたのだそうです。確かに小坂一也さんは「オンボロ人生」という映画で「六さん」という役を演じています。そういえば、当時の写真を見較べてみると雰囲気がよく似ています。私の生徒時代に伝え聞いていた説は、【英語の評価が辛く、10段階評価の6しかつけてくれないから】とか【サトミの「サ」は3(さん)「ミ」も3(みっつ)その「サ」と「ミ」の合計で6だ】のようなものでした。どちらも、正当な説を聞いてしまった後ではこじつけな感が否めませんでした。奥様は、こうした生徒間の噂はご存じなかったそうで、とても愉快そうに聞いてくださいました。

 ところで、奥様のご実家は石井書店さんです。石井書店は学園創立以来、学園生の教科書や文具の対応はもちろん、草創期には最初の学生寮としての場所をご提供くださっておられました。奥様からはその時代のお話などもおうかがいすることができました。

最後には、思い出に残る同僚についておうかがいしました。学園のOBでもある山縣英明(1期生)・淡路博和(2期生)・木村従郎(3期生・故人)の各先生方とは年齢も近く、非常に仲が良かったそうです。たびたび4人で集まり、石井書店内の一室をお借りして「読書会」を開いていたのだそうです。そういえば、教職員で実施した球技大会での、淡路・里見の卓球のコンビは桁外れに強く、孫ほども年齢の違う若手の先生ペアを軽く手玉に取り、見事に優勝をしたことがありました。

 里見先生は、職員室で仕事をしていると、いつの間にか背後に来て、肩をもみながら一声かけてくださることがありました。私の結婚記念日を覚えてくださっていて、肩をもみながら「今日はケーキでも買って早く帰りなさい」と促してくださったことは一度ならずありました。私立の中学・高校の魅力の一つに、『恩師がいつまでもいてくれること』があります。しかし、このことで、いつまでもいてくれるという安心感に甘えてしまう事も事実です。今回おうかがいして、いろいろとお話を聞く事が出来て胸のつかえが取れたような気がします。

 そうそう、一つやり残してきたことがありました。話に花が咲きすぎて、肩をもんで差し上げるのを忘れてしまいました。『ロクさん先生、近々もう一度うかがいますから、肩をもませてくださいね』

文 新島文化研究所運営委員 星野伸樹


 


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