新島学園短期大学学長に就任して新島学園短期大学 学長岩田雅明 |
同窓生の皆様、今年の4月、新島学園短期大学学長に就任しました岩田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
私自身、前橋で生まれ、大学時代以外は前橋で生活していましたので、新島学園のことは中学時代から、その存在は知っていました。また、中学時代の同級生が新島学園高校に進学した関係もあって、高校時代には新島学園高校の友人もでき、学園の話を聞くこともありました。その時に聞いた話で印象に残っているのは、ある先生が放課後、黙々とグランドの草むしりをしているという話でした。やはりキリスト教主義の学園だけあって、奉仕の精神にあふれている先生がいるのだなと、感心した記憶があります。また、当時は県内のすべての高校が制服着用でしたが、新島学園だけは私服着用だったので、我々から見ると、アメリカの学校のような自由さも感じられる状況でした。
今回、短期大学の学長に就任し、同窓会、各地区根笹会の役員の方たちをはじめとする、新島学園の同窓生の方と数多くお会いした中で感じたことは、学園に対しての思いの強さ、深さでした。それは学園のいいところだけを根拠としているのでなく、いいところも不十分なところも承知したうえでの思い、というように感じられました。
組織と個人との間で最も望ましい状態を表すものとして、エンゲージメントという表現が使われることがあります。エンゲージメントとは婚約を意味する言葉で、男女の間で最もいい関係にある時期といえます。これを組織と構成員との関係に当てはめて、エンゲージメントという言葉が使われているわけですが、このエンゲージメントのレベルが高いほど、組織の成果も高いという関係にあることが明らかとなっています。
新島学園と同窓生の皆さんとの関係は、まさにこのエンゲージメントといわれる状態になっているのではないかと感じた次第です。これは学校側としては、非常にありがたいことであります。わが学校を理解し支援してくれと声高に叫んでみたところで、見ず知らずの人は振り向いてもくれません。それが、多くの同窓生に理解され、支援されているのが現在の新島学園の状況であり、それが私立学校に対しての見方の厳しい地方都市にありながら優れた成果を上げている所以ではないかと感じています。
ある私立の大学が十数年前に経営不振に陥り、そこからの回復を図る中で最初に着手したのが、保護者の組織化だったという話を聞いたことがありますが、それだけ学校にとってはサポーターの存在というものは重要になるわけです。特に地域社会に基盤を置いている学校の場合であれば、サポーターがどれだけいるのかということと、サポーターとの間に、どれだけ深い関係性が築けているかということが、学校の存立に大きく影響してくるといえます。
新島学園短期大学の学長に就任するにあたり、就任したら行うべきことを書いた準備メモを作成しました。その中の一つに「支援組織の編成と充実」というものがありました。就任してから確認してみますと、短大には同窓会、父母の会、そして短大と関係のある企業を中心とした後援会という3つの支援組織があることがわかりました。5月から7月の間に、その3つの組織の役員会や総会があり、財政面等でも多大なご支援をいただいている現状が理解できました。
これらの総会や役員会で私からお願いしましたことは、これらの短期大学のサポーターの方たちとの関係性をさらに深めていきたいということでした。そのためには、短期大学側からの定期的な情報発信を行い、まずは短期大学の現状の歩みと、今後の目指すべき方向性を理解してもらうことが不可欠ではないかと思います。そして、できるだけお会いしてお話しする機会を増やし、相互理解を深めていけるようにしていきたいと願っています。
就任してまだ日は浅いですが、同窓会や各地の根笹会、短大の同窓会、父母の会、後援会といった、新島学園を支援してくれているさまざまな組織の総会等に参加させていただいた中で感じたことは、各支援組織を緩やかに結合し、包括するような総合的な支援組織ができたら、新島学園中学・高等学校、そして短期大学にとって、大変心強いことであるということでした。
もちろん、現在でも各組織が連携・協働しあう場面もあるでしょうし、一人の方が複数の組織で活躍してくれているという状況もあると思います。このような状況をさらに進めて、総合的な支援組織として編成し、「オール新島」としての団結をさらに深く、強くしていくことができたら、それぞれの組織の持つ強力な力がさらに増幅され、素晴らしいハーモニーとなるのではないでしょうか。
また、卒業された学生や生徒の保護者や、退職された教職員などの中にも、新島学園を懐かしむ思いを持ち、支援していきたいと考えている人もいるのではないかと思われますが、現在は、そのような人たちが所属できる組織がないようです。これも非常にもったいない話ではないかと思います。
このような新しい組織をつくることは時間も労力もかかることなので、簡単にお願いするというわけにはいかないと思いますが、つくるとなれば、同窓生の方を中心に進めることになるかと思います。そこで、私が就任して感じたこと、抱いた夢をお伝えし、同窓生の皆様の心の片隅にでも止めていただければたいへん幸いと思い、就任の挨拶とは言えないような内容になってしまいましたが書かせていただいた次第です。
18歳人口の継続的な減少と女子の四年制大学志向という状況の中、短期大学はさらに厳しい時代を迎えています。このような環境の中で必要とされる短期大学となるためには、卒業後の進路を豊かで確かなものにしていくことが不可欠となります。そしてそのためには、専門分野の知識の修得だけでなく、健やかな感性、社会人としての常識、行動力といったことを身につけさせるなど、総合的な人材育成が必要となります。
「人ひとりは大切」という新島襄の教育理念を承けた新島学園短期大学ですので、一人一人の学生を大切にし、2年間という短い期間ではありますが、四年制の大学に負けないような中身の充実した濃い2年間として、その中で学生の成長を図り、支援していきたいと考えています。どうぞ、同窓生の皆様、これからも変わらぬご支援のほど、よろしくお願いいたします。