根笹会からのお知らせ同窓会報「根笹」イベントスケジュール同窓会について地区会情報母校情報
トップページ » 同窓会報「根笹」 » 恩師からの便り

恩師からの便り

【2】

新島学園と私

 神戸 弘(14期)

 私は三十代の前半から新島学園にお世話になり、感謝の気持でいっぱいです。これまで、先生方や保護者、生徒の皆さん、学園を応援して下さる方々のお支えによって歩んでくることができました。

 すでにご存知の方も多いと思いますが、私が生徒として、教員としてすごしてきたささやかな体験の中からいくつかお話をさせていただきます。

 柏木隼雄校長先生は礼拝堂(旧木造平屋)ができあがってからしばらくの間、礼拝堂の鍵をご自分で持って誰にも渡さず管理をしていたということを武井弥太郎先生から伺ったことがあります。また、柏木寛吾先生は、夏の暑い盛りの時でも草むしりをしてるんだ、と聞いたことがありました。隼雄先生にしてみれば支えて下さる皆さんのお気持を思ってということもあったでしょうし、神様から託されたというお気持があったかもしれません。寛吾先生においても同じ様なお気持であったと思われてなりません。

 柏木義円牧師は非戦平和主義者であったことは周知の事ですが、それと共にキリスト教伝道についても大変なご苦労があったことと安中教会の会員の方々から聞いたことがありました。朝早くに弁当(にぎりめしと思います)を持ち、下駄履きという恰好で碓井郡(現安中市)をはじめ各地を歩いて回ったとのことでした。学園には各地から生徒の皆さんが集まって来ていますが、一粒一粒の種がこの頃からも蒔かれていたのだなと思われてなりません。

 私にとって隼雄先生は生徒の時ほんの僅かの時間しかお会いすることがありませんでしたが、清心寮西の常谷橋を奥様とごいっしょに歩く姿にいろいろな思いを後になって感ずることがありました。

 昔は良かったなどと思っているわけではないので、その点はご理解いただければと思います。

 湯浅正次理事長さんは、父湯浅三郎さんの遺志を継がれて新島学園を創立したわけですが、私などには到底気のつかない多くのご苦労や心配があったことと思います。事務室に用事があって伺うと湯浅さんがおいでになり、事務長さんの横に椅子を持って腰かけ、何やら打ち合わせか相談をしている姿を目にすることがありました。時にはむずかしい相談をしたりとは思いますが、私にとってはいつも温和な雰囲気を醸し出して下さっている方だと映っておりました。後になって事務長さんと新藤校長先生からお聞きしたことは、先生方は生徒のために一生懸命やって下さい、後の責任は私が持ちます、と湯浅さんは云っているという事を聞きました。柏木義円牧師の考え方にも通じているのだなとも感じました。

 安中教会での日曜礼拝の時などもお会いしご挨拶をすると、ああ神戸さん、ご苦労様と声をかけられ、ありがたいなと思いました。

 一方、学園のことについてのお気持を知ると、自分もしっかりしなくてはと思うこともありました。

 玄関で脱がれた湯浅さんの靴を見た時、はじめは誰のものかわかりませんでしたが、靴の中底に湯浅と名前が書いてあるのに、アッと驚きました。あとでそっと伺ってみたのですが、にこにこしながら、いろいろな所で脱ぐ機会があるので、自分の靴がすぐわかるように、間違われないように書いていると聞きました。なる程と思うことと、それだけではない思いもあるのではないかと感じました。

 創立40周年記念事業として礼拝堂の建設が始まり、1988年に献堂式が行われ、パイプオルガン設置についても計画が始まりました。新藤校長より湯浅さんから具体的に計画を進めるようにとの話があり、段取りを踏まえながら準備が進み、1990年に奉献式を迎えることができました。

 湯浅さんからは、良い楽器を、毎朝の礼拝を通して生かせる楽器を、将来に向けて応援して下さった皆さんに、コンサートなどを通して還元できる様な楽器を、というお話を伺いました。奉献式の中で献杯の儀式を行いましたが、湯浅さんがうっすらと目に涙を浮かべていたのが印象的でした。事務室で話されている姿と重ね合せ、この楽器を礼拝や行事を通して生かしていかなければ、と強く考えさせられました。

 岩井文男校長先生とは、生徒としての校長先生との時間が長く、教員としては僅か半年という短い期間でありました。幸いにもそれ以外で接する期間もあったので、ありがたかったと思っています。湯浅さんとの関係も私なりに感じる事ができました。岩井先生追悼礼拝の時、肩を落とされている姿にはつらいものがありました。「敬虔なるリベラリスト岩井文男の思想と生涯」に先生の人と成りが書かれていますが、新島学園への思いが感じられます。

 私は多くの学園を支えて下さった方々の思いを自分なりに受け継いで、伝えていかなければと思っていました。音楽の授業を担当して、生徒の皆さんにはいろいろなお気持を抱かせてしまった事もあったかとは思いますが、ご容赦いただければと思います。しかしながら、礼拝の時間を皆さんと一緒に過ごす時、前奏なり讃美歌の伴奏において漠然とした云い方ではありますが、支えて下さっている方々が伝えられるようにとの思いで弾かせてもらいました。礼拝後、茶目気たっぷりに、今日間違ったところあったろ、と云われ、装飾音だよと逃げた事もありましたが、皆さんの耳が知らず知らずのうちに肥えてきたなと嬉しくもありました。

 終りに話を戻しますが、学園の原点を大切に、ブレずに勇気を持って歩んで行く事が大事なことと思います。岡部鎗三郎先生作詞の校歌の詞に「まゆあげて語らん誇らかに…」とあります。この校歌にうたわれている詞にも、すごいものがあると感じています。

 斉唱として、ピアノ・オルガンの伴奏で管楽アンサンブルの伴奏と対応できる様になっています。機会のある毎に声高らかに歌って欲しいと願っています。私も自分なりの立場で更に教えられ、思いを共に感じ伝えることができたらと考えています。

 

1  2

 


新島同窓会報「根笹」

新島学園中学校・高等学校 新島学園短期大学